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「……奥方さま、姫君さまは、苦しい死に方でお亡くなりになられた……」
清白の方と麻冬姫の世にも露な白無垢の屍体から視線を外し、蝋灯りのなか、厳粛極まる声をあげたのは地蔵のような顔に深い皴を刻んだ巌是胤之喇医方であった。
くらくら老女衆
四
暗く静まり返った一室に七人の男たちがいた。
室蝋の薄灯りにちらり、ちらりとうつる翳は陰鬱さを極めている。
みな頭を合わせんばかりに近づき、鼻をすする者、ほろりと泪が頬に伝っている者もいた。が、そんな人々の輪から四人分ほど離れたあたりで鴨に腰のせ、膝に肘つき、顔をおおった一際沈鬱な男がいた。年の頃は、四十あたりか。――
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