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今から三年前の、ちょうどこの季節――
忘れもしない12月24日。クリスマスイヴだった。
最愛の妻、由美が交通事故で死んだ。
あまりにも突然だった。
その日の夜6時に、会社最寄の駅ビル前にある公園の噴水前で、由美は待っているはずであった。
彼女は几帳面で、付き合っていた頃から待ち合わせ場所には必ず先にいたものだ。
だが、由美は6時30分になっても現れなかった。
おかしい――
携帯電話へかけたが、つながらない。
この公園の噴水は、カップルの待ち合わせ場所として有名で、二人にとっても思い出深い場所だった。
噴水の中央にある水瓶を抱いた女神は、巷で「奇跡の女神」と言われていた。
二人を結んだ象徴であったし、デートの待ち合わせは常にここだった。
場所を間違えるはずは絶対になかった。
何度も携帯電話へかけるが、一向につながらない。
業を煮やして、自宅へ電話をかけた。
コールから留守電――
この場所から自宅までは、30分とかからない。
もう家は出たんだな――
待ち続けた。
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