プロローグ

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「姫川さん?」 街中で急に呼ばれ、ビクッとしてあたし、姫川美羽は後ろを振り返った。 こんな街中であたしを知ってる人……しかも本名を呼ぶ人なんてそうそういない。 恐る恐る振り向いたそこにいたのはスーツ姿の背の高い男性。 佐々先生だ。妹、姫川美奈の担任。 「佐々先生……」 まずい、と瞬時にあたしは思う。 こんなところで声をかけられるなんて迂闊だった。 しかもおもいっきり知り合いだと暴露している。 なんて耳がいいんだ、とあたしは自分の耳を呪う。 知らないふりなど今更できるはずがない。 これ以上へまをしたら取り返しがつかなくなる。 くるりときびすを返し、あなたなんて知らないとばかりにあたしは彼から逃れようとした。 けれど。 「ここってスナックじゃないですか。どうしてここへ?」 逃げようとしたあたしの腕をつかみ、少しのためらいもなく彼は直球でそう問いかけてきた。  
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