嘘つき。

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「人を呪い、人を嘲笑ったその口で、お前は愛を囁くのか」 『卑怯者だ!』 「違う……私は……」 「人を傷つけ、人を拒んだその腕で、お前は愛する者を抱くのか」 『偽善者だ!』 「私はそんなつもりじゃなかったの……」 「人を踏みつけ、人を蹴落としたその足で、お前は自分の人生を支えるのか」 『臆病者だ!』 「……許して……」 「人を妬み、人を憎んだその心で、お前は本当に人を愛せるのか」 『嘘つきだ!』 「違うの! お願いだから許して!」 『卑怯で、偽善的で、臆病な、嘘つき! 許しを請うお前自身が、許されざる罪を作ったんだ!』 「私はそんなんじゃないわ! 私は……」 『自分がどんな奴か気づかない愚か者! 他人の醜さを指差しながら、己の醜さには目を向けない! 自分を見ろ! そして気づけ! お前は嘘つきだ!』 「違う、違うわ、私は違う……。許して………違うの、私はそんなんじゃない……。私は嘘なんかついてない……。私は……私は…………」  
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