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チコが目を大きく見開き、縁側から庭に飛び出した。
テディベアを抱えたまま、空を指差し、叫ぶ。
「おじぃだ!」
雲ひとつない夏の青空には、一人乗り、あるいは二人乗り程度の飛行機が舞っていた。
上下に二枚の主翼を合わせ持つ、プロペラ式の複葉機だ。
チコに倣い、ケンジ以外の家族全員が立ち上がった。
希望の光でも見るような瞳で空を見上げ、祖父に向かって手を振る。
「早く!早く!」
パイロットである祖父は、ヘルメットと一体化しているゴーグルを上げ、親指を立てて見せた。
同時に片目を瞑り、ウィンクする。
鼻の下にたっぷりと蓄えた白い髭が、風に靡いていた。
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