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抱き合って喜ぶ、チコとケンジの姿が頭に浮かんだ。
二人は兄弟、あるいは家族という絆で結ばれている。
それがどんなものなのか、眞奈にはわからなかったが、そこには少なくとも『信頼』というものが存在するのではないかと思った。
私にも信頼出来る相手が居るだろうか? と考えてみる。
……いない。
そう思ったあとに、ピヨ彦の顔が頭に浮かんだ。
本名も年齢も住所も知らない男の顔が、なぜ浮かぶのか可笑しかったが、確かにいま自分の周囲を取り巻く人間の中で、一番信頼出来るのは、ピヨ彦なのかもしれないと思った。
もっとも、その信頼も当てにはならない、とも思っている。
信用していたのに裏切られた、という人間は、この世の中に腐るほどいる。
何より半月に一度、それも咎の中でしか会えない相手となんて、か細い糸でしかない。
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