1.再会

3/34
前へ
/358ページ
次へ
 かつての恋人、朝倉可奈子の命日。  毎年、この日に欠かさず朝倉家を訪問していた圭吾は、近況含め、失礼を承知の上で二ヶ月前に婚約したばかりである事を報告した。  七年間止まったままの時間を動かすために――新たな人生へ向けて、一歩前へ踏み出すために。 「結局、もう一度私を『おじさん』と呼ぶ事はなかったな、圭吾」 「流石にもう、そんな勇気は持ち合わせていません」  おどけた眼をした宍道に見つめられ、圭吾の整った顔に苦笑が浮かぶ。
/358ページ

最初のコメントを投稿しよう!

332人が本棚に入れています
本棚に追加