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「すっごいとこですね」
柵にしがみついて眼下の景色を一望した唯が声を上げた。
その姿に少し頬を緩ませる圭吾は可奈子の墓の前に立つ。
毎回思うことなのだが、この墓地は常に隅々まできれいに保たれ、可奈子の墓も秋の淡い日差しを受けて光を放っている。
きちんと管理されているのだと我がごとのように安堵して、柴田の店から持参した花を捧げた。
また、来ちまったよ。
正直連れて来たくはなかったんだけど、連れもいる。
君に挨拶がしたいって言うんだ。
「ごめんなさい」
駆けつけた唯が圭吾の横にしゃがみこむ。
二人で手を合わせながら、圭吾は心の中で可奈子に語りかけた。
……可奈子。
多分これが、君への最後の挨拶になる。
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