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「待ってよ、リスさーん!尻尾に触らせてー!!」
まだ追いかけていた。
いい加減自分の状況に気づいたらどうなのだろうか。
彼女は走るうちにどんどんと森の奥まったところに進んでいて、自力では戻れないところまで来ていた。
時間と共に日の出は近づき、明るくなった方が東だと方角は分かるがその方向に何があるかまでは少女は知らない。
つまり他の者に助けてもらわねばいけないのだ。
だが今日は元旦。
皆が皆家族や同じ城の人間で新しい年を祝うこの日に、こんな森をうろうろする者はいない―――――。
「リスさー……ん?」
「…………」
(み、緑星人だ………!!)
いや、物好きな者もいた。
両腕を微妙な幅で開きすたすたと歩く一人の男。
全身を明るい緑色の衣装に身を包み、威厳もそこそこに頭上ではある野菜のような兜をつけていた。
リスを追いかけることを止めてその男に釘付けになった少女は思わず質問をした。
「ねぇねぇ」
「………なんぞ」
「頭、重くないの?」
「…………愚問なり」
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