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「ぐ、ぐも……?」
「愚かな問いだと言ったのだ」
少女の雰囲気は柔らかい。
さながら綿菓子のようなまろやかさで、大抵の者ならそれにほだされて優しくしてしまいそうだがこの緑の男はまったく動じていない。
それどころかますます冷たい態度をとっているように見える。
「ときに小童、こんなところで何をしている。ここは我が城から日輪を拝顔する崖への通り道。お前のような餓鬼が勝手に通ってよいところではないわ」
「ぶぅー!ガキじゃないもん!ねこには『ねこもと』っていう名前があるもん!!」
「猫、本…?面妖な名よ」
少女改め猫本は頬を大きく膨らませて怒りをあらわにする。
対する男はと言えば冷静なもので、名前に文句までつける余裕がある。
「そうだっ。ねぇ緑星人さん!お日様ってどっちにあるの?」
「聖人……?いや、貴様は日輪を崇めているのか、そうか」
「ねこはねっ、初日の出を見に来たの。でもお母さんとお父さんどこかに行っちゃったの。ねぇ、知らない?」
「………ついてこい」
再びスタスタと歩き出す男に猫本は慌ててついて行こうとした。
しかし急に方向転換したためか、ずてーんとこけてしまった。
「ふぇ、ころんじゃったぁ~。……うぅ、ヒック、うぇ…」
「……世話のかかる餓鬼だ、まったく」
「ヒック、ひっ、……ふぇ、およ?」
なんと男が少女を立ち上がらせ、さらに抱えるという驚くべき行動に出た。
男の雰囲気からはとても想像できない。
「にょー!!高い高いだー!ありがとう、緑星人さん!!」
「ふん、我は毛利元就ぞ。聖人などではないわ」
にかーと笑った猫本にも変わらずの冷たい態度であった。
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