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「まさか……お前みたいなのが居るなんて予想外だった」
笑いを含みながら言われ耐えられなくなり、開いていた瞳をきつく閉じた。目尻からは涙が頬を伝う。
「でも、ありがたく思って欲しいな。貰ってあげたんだから……お前の話を聞いて、陛下はもちろん王妃も大臣達も大反対だった」
話せないリナリアに対し、饒舌にスカイが語りだす。
「その時に思った……一応、形だけでも正妃が決まれば周りは何も言わない。子供だけ作れば何も問題はないと」
端正な顔つきで微笑を浮かべるスカイに、リナリアの心に棘が深く突き刺さる。
「抱けると思った。でも無理だった……お前醜いし。これからも抱く気もおこらない。だから……俺の行動に口を出すな。お互い干渉なしで暮らそう。陛下達には口裏合わせろ。ああ……そうか、話せなかったか?」
手を額にあて笑いながらスカイが立ち上がり反応を示さないリナリアに近寄る。
「失敗だったな」
瞳を閉じて涙を流している姿を一瞥して一言言い捨てて部屋から出て行った。
――最低な言葉を残して。
とめどなく溢れる涙は枯れることを知らず窓から差し込む月の位置は高く空へと移動した。
スカイが出て行ってどれくらいの時間が流れただろう?
身動き一つせずに寝台に横たわっていると、ふいに扉が少しだけ開き、全身真っ黒の黒猫が現れた。
尻尾は長く瞳の色はリナリアと同じ青と色のない白。
(リナリア……)
頭の中に直接響いた声にぴくりと体が反応を示す。そして、ゆっくりと横を見た。
いつの間にか寝台の上に上がり、リナリアの顔の近くまでくると涙で濡れているリナリアの頬を舐めた。
元気を出せと言っているかのように。
(わかっていただろう?それなのになぜ、また期待をした?お前が辛いだけだ)
切なげな黒猫と目を合わせる。
……わかってたわ。でも、最初会った時に優しく笑ってくれたから、だから誤解したの。もしかしたらって……。
ダメね、私も……。
(そうか……大丈夫だ。俺がずっと一緒にいるから。安心して休みなさい)
……うん、ありがとう。デイジー。
そう心の中で呟くとゆっくりと悪夢が消えればいいと、明日会えば、また優しいスカイに会えると信じて目を閉じた。
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