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『初めまして、リナリアです。これから、よろしくお願いします』
そう掌に記し、にっこりと微笑む。
決して美人ではない顔立ちだが、リナリアの笑顔にシアラ達侍女は視線を外せなかった。その春の日差しのような笑顔には人を惹きつける何かがあった。
「こ、こちらこそお願い致します。」
シアラ達侍女が慌てて立ち上がり一斉に頭を下げる。
その慌てた様子に、ふわりとリナリアが微笑む。
部屋中の空気が一気に変わった。
温かい太陽に包まれているように和やかな雰囲気が部屋中を支配した。
支度が終わると、シアラの案内で、王族のみが使用する食事の間へと案内される。
そこへ辿りつくまで、周りの品定めされているような視線を感じ居心地が悪かった。
リナリアに聞こえるように、わざと含み笑いをする者や聞くに堪えない言葉まで口にする者もいた。シアラが気を使い何度も振り返り気まずそうにこちらを伺っている。
その度に、にっこりと笑って先を促した。
今は、デイジーも居ない。さすがに食事の時まで連れて歩くことは出来なかった。
扉の前に立ち、大きく深呼吸をする。
覚悟を決めて中へと足を踏み入れた。
広い空間に無駄に思える程の豪華な内装。そこで座っているのは、たった3人だけ。
自分が最後だとは思わなかったから焦り、慌てて3人の近くまで行き礼をとった。
その様子に、王妃であるスノウがくすりと笑う。王も微笑み怒ってはいない様子に安堵したのも束の間。途端にスカイの押し殺した低い声が耳に届く。
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