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守られているような安心する温もりに包まれていると涙が自然に止まった。
姉達も、私が泣くたびに慰めこうして抱きしめてくれたことを思い出す。
そうしてくれていると不思議と落ち着きを取り戻した。そして我に返ると、この状況に頭が真っ白になった。
慌ててスノウから体を離す。
そして、テーブルの上に置いてあった羊皮紙と羽ペンを手に取り一言綴る。
『失礼なことをしまして申し訳ありません』
それをスノウに見せるとくすくすと笑い、もう一度優しく抱きしめられた。
「気にしないで……大丈夫よ。ゆっくりで良いから質問に答えてくれる?」
ゆっくりと離れ何を言われるのか予想が出来なかったが、こくりと頷く。
「食事は口に合わなかったんじゃない?」
まさか気づかれているとは思わなかった。一瞬答えにつまる。
しばらく考えたが、これから一緒に暮らすとなると嘘を言っても仕方無かった。
怖々とぎこちなく頷いた。
「やっぱりそうなのね。陛下が『合わないんじゃないか』とおっしゃったから」
どうして陛下が気づくの?
リナリアの思っていることがわかったのかスノウが続きを口にした。
「陛下はね。昔一度だけ視察と外遊も兼ねてシラーに訪れたことがあるの。そこで出されたシラーの料理にとても驚かれたそうよ」
そんな話、初めて聞いた。
「すごく気に入られて、しばらくはトイバスに帰って来てからも料理長を困らせて毎日のように作らせていたのよ」
当時を思い出したのかスノウがくすくすと笑った。
「でも、シラーの料理は自然にそのまま食べる調理法が多くて、陛下はどんどんお痩せになられて周りが病気かと心配して元の食事に戻したのよ」
思ってもみなかった話に目を丸くする。
「だから、リナリア様の食事は今後料理長にお願いして香辛料を少なめに言いましたから大丈夫ですよ」
そこまで気を使われると反対に申し訳なく思えた。
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