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何で?そんな酷いことを平気で言うの?私は……何もしていないのに。何でこんな仕打ちをするの?
震えながらも、納得がいかずスカイを睨みつける。
「何だその目は?そんな醜い顔で見るな。穢れる」
この時ほど声が出せたらと望んだことはなかった。この目の前の男に言ってやりたかった。
どこまで、私の存在を貶し否定するのかと……言ってやりたかった。
「これを被れ。最初で最後の贈り物だ。人前に出る時、そして俺の前でも……必ず顔を隠せ」
リナリアに向かって投げ捨ててきたのは黒のベール。それも何枚も。
リナリアの周りが黒一色に埋められる。
「それと部屋を変える。その黒猫と移れ。お前達は西の部屋にいけ」
また、自分が言いたいことだけ言い捨てると部屋を出て行く。それと入れ違いに侍女たちが伏し目がちに入室し部屋を移るように申し訳なさそうに促した。
侍女達がスカイに処罰されたら申し訳ないと思い侍女達に続き部屋を出る。
長い回廊を歩き案内されたのは暗く、日が落ちると西日が射し眩しかった。
目の前の庭は暗く、人の姿は見えず、誰も通らないような隔離された空間に思えた。
侍女達が退出するとデイジーが慰めるように近寄ってくる。
……デイジーもう嫌だ。助けて帰りたい。
泣き出したリナリアの前に、デイジーがちょこんと座り慰める。
(リナリア落ち着け。大丈夫だ、俺がいるだろ?そんなベールなど被る必要なんかない)
……でも被らないと、また怒られるわ。
顔を上げ目を手の甲でこすりながらリナリアがデイジーを伺う。
(そうだリナリア。ミモザ様に連絡をとろう。すぐに状況を教えるんだ。少しは状況が良い方へと傾くはずだ)
ミモザ姉様に……うん、わかった。今日の夜にやってみる。
一瞬、迷うように瞳を震わせるが何かを決意したように頷いた。
ミモザ……リナリアの一番上の姉にあたり姉達の中でも一番仲が良かった。今は国を継いで父の代わりに治めている。
(それがいい。ここにいたら良くない気がする。手伝うからリナリアは集中するだけで良いよ)
……うん。頑張る。
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