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緑と治癒の国シラー。
大陸の中心に位置するその小国は、周りを大国に囲まれながらも、国民は健やかに裕福な暮らしをおくっていた。
国内に鉱山を所有し豊富な資金源を確保し、生きるために必要な水源はもちろん、年中一定の春の陽気に包まれ農作物が不作になることはなく飢餓に陥ることもない。
まるで時間が止まっているかのような穏やかな毎日。
そして、シラー独自の治癒を確立し医療技術に関しては他国の追随を許さなかった。
それを他国が欲しない訳はなかった。だが、他国が攻め込めない理由もそこには存在した。
シラーの王族、しかも女性のみに代々受け継がれている不思議な力。
その恩恵を受けるために、各国から政略結婚の申し込みが日々押し寄せていた。
シラーの資源と治癒。不思議な力を取り込もうとする他国の権力争い。
それを、書簡が届くたびに楽しそうに眺めている人物がいた。
国王、セント・ジョンズ・アートー=シラー
各国の条件を嬉しそうに吟味し娘達をどこの国に出せばシラーにどれだけの利益を生むのかを日々考えている。
すべてはシラーのためだけに。
現在、娘は6名。6名共、同じ両親の元に生まれた実の娘達。
母である妃は、先代の王の娘。10年前に不慮の事故で亡くなっている。王も、ここから山を5つほど超えた場所にある王太子として育った。
政略結婚だった。
父王の国は力を求め、シラーは経済力を求めた。
いくら資源があろうとも商売としての素質が先代にはなくシラーは困窮していた。そこへ行商を生業としていた父王の国から、当時第2王太子だった父が来たのだ。
それから力が継承される娘達にも恵まれた。
1番上の娘は跡取りとして隣の大国から第2王子を婿として招き入れた。
2番目から5番目の娘も同様に、名の有る国と結婚が決まり、順番に婚儀が行われていた。
そこへ問題がでてきた。
一番手を結びたいと思っていた大国トイバスが結婚の申し込みに、わざわざ大臣を送って来たのだ。
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