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第一印象は……あの笑顔が嘘くさくて信用出来ないと思ったわ。
それに、お姉様に近づくために私に近寄ったことも許せない。
でもタルトは嬉しかった。しかも私の一番好きなフルーツタルトだったし。
それに、食べている途中で視線を感じて顔を上げる度に、優しく微笑む笑顔に密かに照れてしまった。
だからタルトしか見れなくて、一生懸命頬張ったけど……最後は味なんてわからないくらいに緊張した。
太陽のような人だと思った。
栗色の柔らかい髪も、目が合う度に優しく包み込むように見つめられた琥珀色の瞳も……傍にいてほっとする安心感も本当は……気になったもの。
ばかみたい……お姉様目当ての人なのに気になるなんて。
胸に突き抜ける甘い痛みは初めての恋心だろうか?叶うはずもない淡い想い。
「リナリア――」
いきなり声がかかり、教会の出入り口を振り返る。
そこには、大好きなミモザお姉様が困ったように立っている。
どうして、お姉様がここに?教会に移ってから10日は経ったけど、3日に1度は城に帰って顔を見せているのに。
どうしたのかしら?
困っている姉を不思議に思い立ち上がり近づいて行く。
「ごめんなさいねリナリア。実はね……どうしてもと頼まれて」
ミモザお姉様は、申し訳なさそうに視線を後ろに向ける。
そこには……爽やかに笑っているグレイスの姿。
……っ、どうして?お姉様と一緒にここに居るの?
ミモザお姉様に会えたなら私に会いに来る必要はないはず。
ジュリアお姉様に会いたいなら直接ミモザお姉様に願えば良いはず。
「実はね。グレイスが、どうしてもリナリアに会いたいと言って、毎日私に会いに来てうるさいから連れて来たの。ここは王族と一部の人間しか入れないから」
お姉様の説明も何が何だかわからない。
確かにここは代々シラー王族の亡骸が祭られている厳粛な森。入れないのはわかるけど……私に会いに来た?
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