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葉を調べていた?なら、この人も治癒を研究している人。でも、見かけたのは数週間前からのはず。
「見た時は驚いたよ。ドレスが濡れるのも気にしないで膝まで水に浸かりながら助けに行くんだから」
その時のことを思い出しているのかグレイスが微かに笑う。
「助けに行こうかと思った。でも……次の瞬間、動けなくなったんだ。君が鳥を抱き上げた瞬間に見せた笑顔に……一目で恋に落ちた」
恋に……落ちた?何を言ってるの。私はそんなに綺麗な容姿じゃない。
そんな風に言われる資格なんてないのに。
お父様は、この容姿を嫌って私を人前に出さないし、シラーの王女は5人だと他国では思われている。
プラチナブロンドに片目が色の無い瞳は、お母様の命と引き換えにした罪の記憶。
俯いて、その時のことを思い出していると視界がぼやける。
すると、ふいに腕を引っ張られた。
カシャン――とタルトを乗せていたシルバー類が音を立てる。
重力に逆らわずに行き着いた先はグレイスの腕の中。
「いつも辛い時は、ここに来て一人で泣いていたの?誰もいないここで……たった一人で?」
ぼやける視界で見上げると、そこには辛そうな顔をしたグレイス。
どうして、関わりもない、あなたがそんな顔をするの?
どうして、私より辛そうなの?そんな態度だと誤解してしまう。
本当に、私のことを気にかけてくれているんだと。
「それから、ずっと君のことが頭から離れなくて……普段は近寄らない王宮の奥まで探しに行った……用もないのに言い訳を探して」
いつの間にか、背中に手を回され、グレイスの膝の上へと、しっかりと抱き抱えられていた。
さらに近づいた距離に驚き、逃げようとグレイスの胸を押すと、空いている手で片手を取られる。
「見かける度に声をかけようとしたけど出来なくて、このままじゃ誰かに取られると思って……タルトを考え付いたんだ」
タルト?何でタルト……それより、この体勢止めて欲しい。何より近すぎる。
困っているのに、どうしたら良いかわからないのに……強く腕を払えない。
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