タルトの奇跡

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綺麗……私が?そんなこと、お姉様達以外誰も言ってくれなかったのに。 初めて、他の人に言われた。 嬉しい……。 思わず顔を伏せギュッ――とグレイスの服を掴む。 すると、大きな温かい手が髪を優しく梳く。 「何をしているのグレイス!リナに触らないで!離れなさい」 2人の雰囲気が温かく包まれたその時、聞こえて来たのはミモザの驚きを含んだ切羽詰まった声。 お姉様……っ、ちょっと待って。私、今グレイスの膝の上。 「グレイス!約束したわよね?リナリアに髪1本触らないって!」 「ミモザ様。無理ですよ。こんなに可愛いリナリア様を目の前にして」 お姉様に腕を掴まれると一気に立たされ、しっかりと抱き締められる。 ……お姉様、苦しい。 「伝えるだけだって言うから会わせたのに。私の勘だと、リナリアに断れてる頃合だと思って戻って来たら……何をしているの?……グレイス」 グレイスも立ち上がり、2人の前に立つ。 「見ての通り、リナリア様に想いを伝えている所です。もう少し時間を貰えませんか?」 「もう約束の30分はすぎているわ。続きがあるなら私の前で話をして」 お姉様の目の前で話?いくら姉妹でも聞かれると恥ずかしいし、なにより……自分だけの心に仕舞っておきたいこともあるのに。 「……わかりました。そうさせて頂きます。ミモザ様は少し離れて下さいませんか?邪魔です」 グレイスの言葉が予想外だったのか、一瞬驚き迷いながらもミモザがリナリアから手を離した。 「行って来なさい。自分の心のままに動きなさい」 そう言うと、さっきと同じようにミモザがリナリアに軽く額に口付けをすると、入り口の方へと歩いて行く。 「リナリア様……」 声をかけられ振り返ると、そこには少し緊張した表情のグレイス。 トクン――と心が音を立てる。 グレイスの緊張が伝染したように、私も体が強張る。 これから何が起こるかわからない不安と、初めて経験する人から想われると言う嬉しさに。
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