月夜にダンスを

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今日は満月――そして舞踏会。 一年で、昼が一番長いこの日……毎年のように舞踏会が開かれるのがシラーの伝統。 近隣諸国や国内の有力貴族達が集まり賑やかなざわめきが風に乗って温室まで届いていた。 なのに一人温室の川のほとりで寂しげに腰を下ろしフルーツタルトを、ぱくついていた。 お父様に今日も舞踏会に出る許可を貰えなかった。今日だけではない。多分これからも一生出ることはないだろう。 お父様は私を嫌っているから。私を他国に見せたくないから存在しない人間として隠していた。 私も踊りたかったのに。グレイスと一緒に踊りたかったのに。 光は月の導きだけ。その淡い光に誘われるように空を見上げた。 まだ……終わらないのかな?まだよね……始まって間もないもの。グレイスは今誰と踊っているんだろう? 公爵家の人間としてグレイスは舞踏会に出る義務がある。そのため、私の傍にはいられない。 わかっているのに……心はざわめく。綺麗な大人の女性と一緒にいる姿を想像したら泣きたくなる。 甘いフルーツタルトは勿論グレイスの手作りだ。 私が少しでも寂しくないようにとフルーツタルトにブルーベリータルト……あとは舞踏会と同じ料理をお姉様達が届けてくれた。 少しでも寂しくないようにと時間の許す限りいてくれて慰めてくれていた。 でも舞踏会が始まると誰も居なくなり、まるで世界に一人になった感覚に陥る。 やっぱり一人は寂しい……。 泣きそうになるのを我慢して甘いタルトを口に運ぶが味がわからない。 「リナ…………」
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