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綺麗になりたい――グレイスと一緒に舞踏会に出ても恥ずかしくないように胸を張って横に立ちたいのに。
「リナリア何で怒っているのか教えてくれないか?」
言える訳ない。違う香りがしたから怒っているなんて。
多分、これは舞踏会で女性と踊ったから。その移り香。わかってる……仕方がないことだって。でも……心は嫉妬している。
そんな子供っぽい考えグレイスには知られたくない。
……私とは一度も踊ってくれたことないのに。
私と踊ってくれない理由は分かっている。
私の気持ちを汲み取って舞踏会の話を私の前でしないためだって……それは知ってる。でも……私も踊りたいもん。
「リナリア――ごめん」
何でグレイスが謝るのよ。私が悪いのに。違うの……ごめんなさい。ただグレイスとダンスを踊りたかっただけなの。
それと寂しいだけ。
置いていかれる気がしたから――――。
「お前とダンスを踊りたいそうだ」
収集がつかなくなり、泣きじゃくり始めるとグレイスとは違う別の声。
顔を上げるとデイジーが優雅な足取りで、あきれたように足元まで来る。
「デイジー……えっ、それだけ?」
私が泣いていた理由の原因が、それだったとは思ってもいなかったみたいでグレイスが目を丸くする。
それだけって……私には大切なことなのに。グレイスには些細などうでも良いことなんだ。
だって……踊りたいんだもん。
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