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わかっているわ……でも素直になれなくて。あんな態度を取ってしまう。
グレイスは、きっと、私にあきれたわね……今頃また、何処かの令嬢達とダンスを踊っているわ。
ズキン――と走った痛みは自分のせい。
グレイスに謝らないと。でも舞踏会に戻ったなら私は入れない。明日一番に会いに行こう。
「そうだな、今回は素直に言わなかったリナリアが悪いな。笑ったグレイスもだが」
うな垂れるリナリアにデイジーが苦笑いする。
「ほら元気を出せ。俺がダンスの相手をしてやるから」
……デイジーが?どうやって?
思いもよらなかった提案に目を丸くする。
デイジーが踊れる訳がないから。だって……猫だもの。
「失礼だな……ほら抱き抱えろ。そしてステップを踏め。聞こえてくるだろ?いいタイミングでワルツだ。リナリアも得意だろ」
急かすように手を差し出すデイジーに言われるがまま抱き抱える。
耳をすませれば確かに微かだが音楽が聞こえてくる。
「舞踏会より素敵だぞ。闇夜に照らし出す光は月の導きと星の輝き。風が運んでくれるのは微かな旋律と虫の声音。そして見守ってくれる木々のざわめき」
最高の舞台だとデイジーが笑いかける。
空を見上げると確かに見守ってくれるような満天の輝き。
本当は一番最初にグレイスと踊りたかったけど……しょうがないからデイジーで我慢してあげる。
「ああ、そうしてくれ。ただターンはゆっくりと優雅にしてくれよ。目が回るのはお断りだ。それと足を踏まずに済むな」
デイジーの嫌味に何も言い返せない。ダンスの練習の時に教えてくれた先生やお姉様達の足を踏みまくったのは記憶に新しい。
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