月夜にダンスを

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『グレイスが他の人と踊る所を想像して悲しくて羨ましくて……泣いてしまったの。それを知られたくなくて意地を張って困らせて、ごめんなさい』 あの時の気持ちを何度もグレイスに伝わるように文字を綴る。 指でなぞる度にグレイスの手が、わずかに動くが何も言ってくれない。 『他の人の移り香が嫌なの……グレイスは私のものだから』 だから……だから……ごめんなさい。 困らせてばかりで、他の人が羨ましくて情けなくて、子供っぽくて……。 『ごめんなさい』 最後は何が何だかわからなくなった……グレイスが何も言ってくれないから。 もしかして子供っぽい私が嫌になった?……嫌いになったかな?もっと大人の女性を選べば良かったと後悔したかな? グレイスから手を離そうとすると思いっきり引っ張られ抱き締められる。 でも何も言ってくれなくて、しばらくグレイスの腕の中で心地よい温かさに身をまかせた。 グレイスの鼓動を聞いていると、あんなに緊張していたのが嘘のように体のこわばりが解れていく。 でもグレイスが気になりモゾモゾと動き何とか見上げる。 すると……そこには頬を赤く染める初めて見るグレイスの照れている姿。 …………こんな顔、初めて見た。 怒ってない……?大丈夫かな……?何か言って。 催促するようにグレイスの服をギュッと掴むと視線が絡み合う。 「可愛いリナリア…………ありがとう」
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