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しかも、顔立ちも目立たずいたって普通。お世辞にも綺麗とも可愛いとも言えない。いわゆる……印象に残らないと言える。
初めて末の娘と会った人物は大抵同じ反応をする。
目を逸らし挨拶だけ形だけかわし、そそくさといなくなる。
『醜い』と笑い合いながら。
それに、もっとも必要とされる力までも失っている。しかも声までも。そんな面倒な娘を誰も欲しがらない。
しかも、姉達に囲まれれば無様なもので、傍にいるだけで姉達の引き立て役。
見ている者が可哀想に思えてくるほどに。だから王は末娘の存在をひたすら隠してきた。
――――そしてトイバスから使者である大臣がやって来たのはそれから2週間後。
誰もが忘れていた……どうせ断わりの話だろうと。
しかし、再びやって来た大臣の言葉に王は驚愕した。
「ぜひに末の姫君をトイバスに頂きたいと」
王は、呆気にとられたが、本当に良いのかと何度も大臣に、しつこいほどに確認した。
それでも、トイバス王家の返事は『姫君をぜひに』と言う返事に変わりはなかった。
半信半疑に思いながらも、これで問題だった末娘を嫁に出せるとトイバスの気の変わらぬ内にと結婚準備を進めた。
これを機に、王位を長女に譲り穏やかな生活に入る決意を国中に伝えた。
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