満たされぬ心

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俺は一人の女を愛した。 もうアイツ以外欲しいと思わなかった。 ただ一人の女だった。 例えそれが妹でも。 アイツも同じ気持ちだった。俺の事をこの世で一番好きだと、俺だけでいいと言っていた。 俺達は密かに付き合い出した。 けれど血の繋がった兄弟。一線を越える事は無かった。一緒にいられるだけで、幸せを感じていたから。 でもその蜜月に終わりがきた。妹に結婚の話が持ち上がったからだ。 よくある話だと思う。 親の会社の大口の取引先の息子で、断れる状況では無いと。 妹は承諾した。幸いだったのは、ドラマの様な馬鹿息子ではなく、しっかりとした好青年で、妹の事を愛してくれていた事だ。 妹の結婚前夜、俺達は躰を重ねた。 最初で最後の時だった。 結婚の2ヶ月後、妹の妊娠が分かった。 皆心から喜んだ。 ……俺と妹以外の。  
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