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「……それもいいかもな」
「やった!じゃあ早速今日から此処が私の家ね!」
「お前、ただ家に帰りたくないだけだろ」
「ばれた?」
小さな子供の様に、笑いながら舌をペロッと出す響。しかしその顔は切なげに歪んだ。
「お父さんと一緒に過ごすの、辛いもの」
響の想い人は『父親』。と言っても本当の親では無い。母親の再婚相手らしい。
「……想いを伝えないのか?血が繋がってないなら、倫理的にそんなに問題無いんじゃないか?あくまで俺と比べてだけどな」
「絶対に伝える気は無いんだ。お母さんも大切だから。
私の本当の父親って、酒にギャンブルに暴力にって、本当ろくでもない人だった。そんな人から逃げ出して、必死に離婚を成立させて、私を育ててくれたお母さん。そして今度こそ愛した人と幸せになろうとしているお母さんを、私が裏切れるはずがない」
「やっぱりお前、綺麗だよ」
俺は再び響を押し倒した。
意思の揺るがない瞳をした響は、本当に綺麗だった。
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