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「大丈夫。でも、優兄のとこまで手繋いでていい?」
「いいよ。あのさ、何かあったの?」
二人は手を繋いだまま歩き出した。柊は深呼吸を2、3回して気持ちを落ち着かせた。
「うん。何か分かんないけど、女の子の声で『ショータイムだよ』って言われた」
「ショータイム?何のことかな?」
「分かんない。でも、その声の主は覚えてる」
はっきりと柊の印象に残った。あの人は自分の事を知っていると。
しかも、その印象は柊をあの世に連れて行く死に神の様な、暗い底へと誘う様な一瞬でそんな強い不安を残した。
柊は無意識に強く手を握りしめていた。楓は少し眉を潜めたが言葉には出さなかった。
楓には柊が思った事が何となく伝わっていた。今の柊には恐怖しかないと。
楓は握っている手に少し力を入れた。反対に柊は力を抜いてごめんと謝った。
「大丈夫だよ。ところでどんな人だったの?」
「うん。全身黒ずくめでシルクハットを被ってたような…。顔は分かんなかった」
「…それって」
「どうしたの?」
楓は少し考え込んだが、自分では判断出来ないと思い考えるのを止めた。
「ううん。何でもないよ」
「嘘じゃない?」
「僕は柊に嘘はつかないよ」
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