第一章

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「大丈夫。でも、優兄のとこまで手繋いでていい?」 「いいよ。あのさ、何かあったの?」  二人は手を繋いだまま歩き出した。柊は深呼吸を2、3回して気持ちを落ち着かせた。 「うん。何か分かんないけど、女の子の声で『ショータイムだよ』って言われた」 「ショータイム?何のことかな?」 「分かんない。でも、その声の主は覚えてる」  はっきりと柊の印象に残った。あの人は自分の事を知っていると。  しかも、その印象は柊をあの世に連れて行く死に神の様な、暗い底へと誘う様な一瞬でそんな強い不安を残した。  柊は無意識に強く手を握りしめていた。楓は少し眉を潜めたが言葉には出さなかった。  楓には柊が思った事が何となく伝わっていた。今の柊には恐怖しかないと。  楓は握っている手に少し力を入れた。反対に柊は力を抜いてごめんと謝った。 「大丈夫だよ。ところでどんな人だったの?」 「うん。全身黒ずくめでシルクハットを被ってたような…。顔は分かんなかった」 「…それって」 「どうしたの?」  楓は少し考え込んだが、自分では判断出来ないと思い考えるのを止めた。 「ううん。何でもないよ」 「嘘じゃない?」 「僕は柊に嘘はつかないよ」
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