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寒い。物凄く寒い。
雨が地面を叩き付ける様に降る中、僕は身動きすることも出来ずにいた。
まだ産まれたばかりの猫なのである。
産まれた時、兄や姉、お母さんとお父さんから離されて、僕は大きい人に道端に捨てられた。
寒い。お腹が空いた。
重い瞼を閉じかけたその時、今まで身体を打ち続けていた雨が突然止んだ。
いや、正確には僕の周りの雨だけ。
見上げると、真っ赤な傘を差した女の子が屈んで僕を見ている。
助けて……
そう言うと、その女の子は僕の頭を撫でながら
「猫ちゃん……寒いの?」
と、その大きく吸い込まれそうな瞳を潤ませて問いかける。
僕は一生懸命頷いた。
「可哀想……」
そう女の子は呟くと、不意に僕を抱き上げて、反転した。
その向こうにいるのは、どこかその女の子と顔が似ている二人の男の子。
「優兄ぃ。純兄ぃ。猫ちゃん見つけたの。とっても寒いんだって。可哀想だから……連れてっていい?」
女の子が男の子二人にそう問いかける。
背の小さい方の男の子は困った顔をする。逆に背の大きい方の男の子は、僕たちに近づいて来ると、女の子の頭を優しく撫でた。
「お母さんとお父さんに聞いてみよう」
不思議な物だ。
まだ子どもだと言うのに、その男の子の言葉はとても力強くて、女の子と背の小さい男の子の背中を押す様な効果が出ていた。
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