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-------パァン--…
乾いた竹のぶつかる音が
室内に響く。
「うっひゃ~」
型を微妙に崩した様な動きで由紀は何とか帝のうち込みを避けていた。
「…はっ…」
一方の帝は正しく習った型をしっかりと踏まえた足取りで
由紀を攻めにかかる。
「ちょ…何なのさ!」
喉元に竹刀が触れようとした時に、由紀は口を開いた。
「『なに』とは何?」
「あんたなんで、俺の技が当たんないのよ」
「『見えて』るから」
ハァ、とまたため息をついて由紀を見た。
「お前の軌道はぶれてるし、猪突猛進な攻撃じゃ一向に当たらない。
それが俺には見える。
打ち込んでやっても良いけど…
もうちょっと強くなってよね」
むぅ…とふくれた頬の由紀を帝は見下しながらそう言うと
すたすたと鍛練場から外に出た。
「全く、どこに行く気かねぇ」
寅さんの独り言がむなしく響く。
「わっだぁぁぁぁあ❗
帝腹立つぅ❗何なのよったく」
「安心しろ、帝は相当手加減していた」
「わっきゃぁぁぁあ❗」
頭をおもむろに掻きむしりながら
由紀は竹刀を見つめていた。
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