01、呼んだけどお呼びでない

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勿論俺の尊き、数々のノーベル平和賞を受賞した面々でさえ霞んでしまう訴えを今の日本は聞いてはくれない。 エコ、エコと環境を大切にすることにばかり目を向け、人間を蔑ろにしている。全く憂わしいことこの上ない。さて、こんなにも日本の行く末を嘆いている俺であるが今は布団の中にいる。 夢を見ながら夢を叶えているのだ。夢見るドリーマーだ。実に語感が良い。 しかしこんなにも馬鹿みたいなモノローグを語っているのだ、脳の八割は起床しグリア細胞が朝食を振る舞っているだろう。 だが俺は断固目を開きはしない。今日は日曜日。国民の休日。午前中に起きるなど気が違っているとしか思えない。 眠たくなかろうと正午までは起きない。それが俺の戒律。遵守し布教していきたい。 「咲ちゃん早く起きないとシンデレラになっちゃうよ」 夢の映像に現実の音声が混じった。(ちなみに夢の中でも布団の中にいる) 何とも間の抜けた声で間の抜けたことを言っている。脳は覚醒しているので目を開かずに応答してやる。 「なんだ?俺は午前中を過ぎると魔法が解け継母に虐められるのか?」 「違うよー咲ちゃんは午前中過ぎるとチューしないと目が覚めなくなっちゃうんだよ」 「毒リンゴと混ざってるぞそれ」 布団が捲られる。馬鹿野郎。寒い。死ぬ。あの適度で心地よい重みを返せ。 直ぐに返された。 しかし付属品が付いてきた。 「出てけ俺はパンツしか履いていないんだ、家族が部屋に来てみろビッグバン以来の衝撃が我が家を襲うぞ」 「大丈夫だよー私は服着てるもん」 大丈夫なものか。 仕方がないので俺が布団から出た。戒律は今日限りで破棄だ。俺の家庭での立場以上に優先されることなどこの世には無いのだ。
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