01、呼んだけどお呼びでない

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遅ればせながら自己紹介といこう。 俺の名前は櫻井咲(さくらいさく)という。十八歳、高校三年生。母親が昔から温めていたネーミングらしい。 この名前で受験を失敗でもしたら俺は謂われ無き迫害を受けるのではないかと日々不安と戦っている。 そしてこの素頓狂な話し方の女性は幼馴染の東出雲美久(ひがしいずもみく)である。同じく十八歳、高校三年生。 小粋な名字なのだがそれを帳消しにし、更に勢い余ってマイナスにしてしまう言動を常とする。 恐ろしく減点方女子なのだ。 自己紹介はこのくらいにしておこう。俺は自己紹介をしている自分というのがもの凄く嫌いなのだ。 俺の中の最上位の俺。そいつが自己紹介をする俺を客観的な立ち位置から見ているのだ。耐えられない。女の子のように手の平で顔を覆い三角座りしたい衝動に駆られる。 さて、幼なじみの条件とはなんであろう。 同じ釜の飯を食う、それもある。 幼少期の恥ずかしい秘密を握っている、それもあるだろう。 だがしかし、一番の条件といえば、家が近い、これに限るだろう。 そう、我が家と東出雲家とは恐ろしく近い。最早隣接しているといっても過言ではないだろう。 美久の部屋から俺の部屋にはちょいと足を伸ばせば届いてしまう。 故に恐ろしく日当たりが悪い。(俺の部屋のみ) であるからして俺の部屋に美久が居ることは日常茶飯事なのである。 頼みもしないのに日曜日だろうがキリストが降臨した日であろうが全自動で起こしにくる人型目覚ましという認識でも構わない。 ただし電源スイッチは見当たらないので使用の際はそれなりの気持ちで臨まねばならない。
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