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空が綺麗な青に染まっている。
ここは、人が絶え間なく行き交うとある街の中心街。
時折お互いがぶつかりはするものの、基本的に人の流れは止まらない。
しかし、突然1人の老婆が立ち止まった。
そして空を見上げる。
ある人はその老婆を怪訝な目で少し見て歩いていき、
ある人はその老婆を邪魔そうにしながら避け、歩いていく。
何故か、同じように空を見上げる者は誰もいない。
「何かが……
何かが……来ている」
老婆は人の目を気にすることなく、空を見たまま呟く。
「リングが……リングが…壊れる、壊れる、壊れる壊れる壊れる壊れる壊れる壊れるアアアアアアアアアアア」
だが、老婆は奇声を上げだしたかと思うと、突然倒れ、動かなくなった。
「キャアアアア!!」
「な、なんだ、どうした!?」
「ずっと立ち止まってたババアが突然倒れたらしいぞ」
「うわあああ!」
一瞬で人々の悲鳴が辺りを包んだその中心街の、ある建物の屋根の上にいた青年はその様子を見、空を見上げた。
「――なんだ。
別にいつもの空じゃないか」
そう言った青年は黒い笑みを浮かべ、空へ飛んでいった。
紫色の、空へ。
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