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唇が離れたタイミングで、電車が来るアナウンスが鳴った。
「‥‥‥」
「‥‥お別れ、ですね」
「‥うん、」
タイムリミットがきた。
二人の時間は、今日で止まる‥
繋いだ手を離したくなくて、余計にぎゅーっと力が強まった
でも、やっぱり離さなければいけなくて
あったかかった俺の左手は、一気に元の温度に戻った。
ゆっくり、ゆっくり
なるべく長く一緒に居れるように
ゆっくり、ゆっくり
電車に乗り込む。
「‥風邪引かないでね‥!」
「ふふ、うん。」
「ご飯食べなきゃだめだよ?」
「なるべく食べます」
「ゲームしすぎ禁止っ!」
「てかさ、そういうのって
俺が言うんじゃないの?」
「そう‥だよね!‥うん。
もう言わない!」
「じゃあ‥ね、‥」
ゆっくりドアが閉まる。
窓越しに見える雷は、確かに
「泣いてる‥?」
ぽろぽろと涙を流しながら、何か言っていた。
でも、なんて言ってるのか分からなくて、もどかしくて、苦しくて苦しくて、
思わず涙が溢れ出た。
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