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自らのこめかみにソレを突き付け彼は言った。
「もし俺が死んだら、アンタは泣いてくれる?」
いつも以上に冷静な目で言うもんだから、ついつい言葉を失ってしまう。
ましてやそんなキャラじゃないのに‥なんて考える余裕があるのは、余りにも滑稽な話だ。
‥いや、むしろ丁度いい
今、この状況だからこそ、難しい理論や憶測なんかを放っておいて考えることができるのか、
否、それは俺の自己満足にしかすぎない
「なぁ雷、死ぬつもりか?」
「ふふ、それはどうかな。このまま炎さんをバーンでもいいけど」
おいおい、冗談はよしてくれよ。まだまだやり残したことはあるんだ。
家のテレビは点けっぱなしだし、最近飼い始めたイグアナの餌もやってない。
「どうせなら一緒に逝かないか?」
まあ、イグアナは何日か餌をやらなくても死なないし、テレビは誰かに消してもらおう。(そういえば今日は緑が遊びに来るらしい。丁度いいじゃないか)
「炎さんと一緒に逝けるなんて本望だよ」
「それはありがとう。じゃあまずは俺が先に雷をヤってやるよ。最後に見る顔が俺の死に顔だったら悲しいだろぅ?」
「それもそうだね、じゃあお願いするよ」
渡されたソレをまじまじと見つめる。悲しそうに銀色に輝くソレは、あまりにも美しくて‥そう、滑稽だった。
覚悟を決め、彼のこめかみに先を向ける。
ああなんて可愛いらしい顔なんだ
引き金を引こうとしたその瞬間、渇いた音が部屋に響く。
倒れたのは、紛れも無く"俺"だった
(あぁ、なんて滑稽なハナシなのだろう)
「人を信じた弱みだね
これからはずっと、一緒ですよ」
"炎さん愛してる"
(そうか、それも悪くない。ならばイグアナに餌をやっておいてくれ)
(それが俺の本望だよ)
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病みやみヤミYAMI
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