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翌日、勘助は信方に連れられ、信玄と対面した。
「その方が山本勘助かわしが武田信玄である」
「山本勘助に御座います」
「今川家には仕官出来なかった様じゃな、何故だと思う」
「一言で云えば、義元殿に見る目が無かったと云う事で御座います、外見第一で能力は二の次と云う御方ですから」
「わしは、どの様な男だと思う」
「信玄公は、能力第一主義の方とお見受け致します」
「何故そう思う」
「勘助のかんで御座います」
「ははは、面白い奴だ二百貫で召し抱えよう」
「有り難き幸せに存じます」
信玄の家臣となった勘助は、幾度かの戦に従軍し信玄の軍師とまでになった。
才蔵も勘助の指導の元その才能をめきめきと発揮し、今では師匠の勘助も驚く程の能力の持ち主となり、信玄の近習を勤めるまでになっていた。
そんな中、海津城の高坂昌信から伝達狼煙が発せられ、宿敵上杉謙信の信濃侵入が知らされた。
信玄は直ぐさま兵を召集し、川中島へと軍を発した。
妻女山に布陣している上杉軍を遠目に見た信玄は、暫し対陣した後海津城へ入城した。
海津城内で開かれ軍議では、勘助の提案した啄木鳥の策が採用された。
その夜、信玄は近習の才蔵に勘助の啄木鳥の策をどう思うか聞いた。
「大変良い策だとは思いますが、妻女山に向かう人数は半分の四千で宜しいのではないかと思います」
「何故そう思うのだ、上杉軍は一万二千程も居るのだぞ」
「確かに一万二千に対して四千では少ない様に思われますが、此度は正面攻撃では無く、あくまでも上杉軍の追い出しで御座いますれば、追い出された上杉軍を迎え撃つ方にこそ人数を多目に充てるべきかと思います」
「成る程、才蔵の考えにも一理あるの」
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