武田家への仕官

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「誰の隊だ出過ぎて居るのは」 信玄は言い、馬回り衆に見て来る様に命じ様とした時、前方を遮っていた霧が徐々に消えていき、前方に大軍が布陣しているのが見えた。 武田軍も上杉軍も共に目の前に現れた敵の大軍に驚いた。 直ぐさま両軍共に戦闘体勢に入ったが、兵力は武田軍の六千に対して、上杉軍は一万二千と武田軍の倍であった。 上杉軍は、車懸かりの戦法で、次から次へと新手を入れ替え武田軍を押し巻くった。 武田軍は、妻女山に向かった別動隊八千が戻るまで持ちこたえねばならなかった。 信玄の元には、弟の信繁を初め、名だたる武将の討ち死にの報せが寄せられた。 「賭けに負けたな」 信玄は側にいた近習の才蔵にむかい、ポツリとささやいた。 「某の失態で御座います」 勘助は信玄に頭を垂れた後、才蔵に向かい 「御館樣を頼むぞ!」 と言うと、信玄に顔を戻し 「御館樣、某亡き後は才蔵を某の変わりとして下さりますようお願い申し上げます」 「勘助、死ぬ気か」 「師匠!」 「さらばで御座る!」 言うと勘助は激戦の中に姿を消した。 山本勘助の討ち死にの報せが届いたのと同時に、妻女山の別動隊が川中島に到着した。 攻守は逆転し、上杉軍は敗走した。 武田軍の武将が数多く失われた戦であった。
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