589人が本棚に入れています
本棚に追加
「だが今川とは北条も交えた三国同盟が結ばれておるぞ」
「義元殿が居てこその三国同盟であり、義元殿が亡くなられた今となっては、同盟など無意味と存じます、氏康殿も少なからずその様に思われているはずです」
「うむ、わしと寸分違わぬ考えじゃ」
信玄は満足そうな顔で勘助を見たが、勘助は浮かぬ顔をしている。
「どうした、まだ何か気になる事があるのか」
信玄の問いに勘助は
「御嫡男の義信樣の事に御座います」
「義信の嫁が義元殿の娘と云うのが気になるのか」
「今川攻めを義信樣はどのように思われますか、正義感の強い御気性ですから」
「義信はわしの後継者だ、今川領を攻める重要性位は分かるであろう」
信玄は言ったが、後に勘助の懸念が的中する事になろうとは、よもや思わなかったであろう。
勘助は信玄の命を受け、今川氏真と松平元康の動きを探る為に駿府の庵原安房守の屋敷を訪ねた。
「某、二代目山本勘助と申します、先代山本勘助より庵原樣の事は聞き及んでおりまする」
「勘助殿は、川中島で討ち死にされたとか」
「はい、それで某が信玄公の命を受け、二代目山本勘助を名乗っております」
「先代山本勘助に劣らぬ才覚の持ち主と信玄公が認めた訳ですな、それで早、今川家の動きを探りに参られたと云う事ですかな」
「あいや、庵原樣は師匠が申しておった通り頭の切れる、腹の据わったお方で御座いますな」
最初のコメントを投稿しよう！