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「慶次!そなたは何時も父上の側に仕えておるのであろう。その慶次が勘違いするはずがなかろう」
お江が慶次を問い詰めた。
「これお江」
秀忠がお江を諫めた。
慶次がしょぼくれたのを見て忠勝が
「大武辺者の前田殿もたじたじで御座るな」
と言った。
「面目御座らぬ」
慶次は肩をすぼめた。
「いやいや慶次の目は確かじゃ」
意を決した勘助が言った。
「何があったのですか」
お江が聞いた。
「実はな上様に隠居を願い出たのじゃが、許可する代わりに条件を付けられてな」
勘助が言った。
「ほお隠居で御座るか、で上様が出された条件とは」
家康が聞いた。
「たいした条件では御座いませぬ、幕閣に残るように云われましてな、だが妻のお市には隠居して二人でゆっくり過ごそうと約束してしまったので、その言い訳を考えておったのじゃ」
勘助が確信に触れぬように答えた。
「ふふふ」
お江が笑った。
「何が可笑しいのじゃ」
勘助が聞いた。
「その様な事で悩んでおったのですか父上は、母上ならば大丈夫ですよ。父上の事を一番理解しているのは母上ですから、ご安心下さい父上」
お江が言った。
「天下の山本殿の強敵は奥方で御座るか」
家康が言った。
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