勘助隠居

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「まさにその通りに御座る」 慶次が横から口を挟んだ。 「これ慶次!山本家の極秘事項を明かしてはならぬ」 と勘助は真顔で言ったので、皆が大笑いした。 勘助は、お江の言葉に救われた気持ちであった。 翌日勘助はお江、秀忠、家康等に見送られながら浜松城を後にした。 勘助は慶次に 「陸路は止めじゃ、海路で大坂に向かうぞ」 と言った。 「それでは一足先に港に向かい船を探して参る」 慶次は言い、松風を飛ばした。 勘助は慶次が探した船で泉州堺の港に到着し大坂城に向かった。 大坂城に着いた勘助は、側近の山上三蔵に明日、主だった家臣を大広間に集める様に命じた。 勘助は、お市の部屋へ向かった。 「お市、居るか」 と部屋の中に向け声を掛けた。 「はい」 中からお市の声が返った。 「入るぞ」 勘助は言い、お市の部屋へ入った。 勘助が話し掛ける前にお市が話し掛けた。 「隠居は許されましたか」 「あっ、おお許されたぞ」 勘助はお市の目を見ずに答えた。 「それは良う御座りました。これからは二人してゆっくりと出来ますね」 お市が言った。 「あっいや、それが…何じゃ、あの…」 勘助が言いよどんだ。 「どうかなされたのですか」 お市が聞いた。
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