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暫くすると与作の父親が畑仕事を終えて帰って来た。
父親は勘助を見ながら与作に勘助の事を聞いているらしかった。
「お侍樣が才蔵を育てて下さるのか」
ぶっきらぼうではあるが、愛情のこもった目で才蔵を見ながら勘助に聞いた。
「某、山本勘助と申す、某が責任を持って立派な侍に育て上げてみせるので安心して下され」
勘助を父親の目を真っ直ぐ見詰めた。
「才蔵、良かったの山本樣の言う事を良く聞いて立派な侍に成るんだぞ」
「はい、叔父さんお世話になりました」
才蔵はぺこりと頭を下げた。
その頭を父親は、いとおしそうに撫でた。
お上さんが買って来た酒と肴で、才蔵の送別会が夜遅くまで行われた。
翌朝、勘助と才蔵は与作の家を後にし、甲斐へと向かった。
才蔵は侍に成れるのが嬉しいのか、単なる旅が嬉しいのか、跳び跳ねる様に歩きながら
「師匠、これから何処に行くんですか」
才蔵がニコニコしながら勘助に聞いた。
「甲斐の国に行く」
「甲斐と云えば武田信玄か?」
勘助は才蔵の言葉使いに呆れながら
「そうだ、それよりも才蔵、先ずは言葉使いを直せ目上の者には敬語を使うのだ」
「はい、分かりました」
才蔵は素直に勘助の言葉を聞いた。
二人は様々な事を話しながら、甲斐の国を目指した。
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