『遺作』

2/44
前へ
/44ページ
次へ
○火葬場の待合室。 外はすでに夕暮れ。 広くて、ソファーがいくつもある。 アナウンスが流れ、一組の家族らしい団体が舞台袖から消える。 喪服姿が点々している。 初老の男、中村と中年男性の鈴木。 中村 鈴木ちゃん、最近、先生と会ってたんだって? 鈴木 少し用事があってね。おっさん、ガンだって言ってたから、もう顔なんかもげっぞっとしててね。 中村 前から聞きたかったんだけど。 鈴木 何が? 中村 なんで杉森先生の弟子なのよ? 鈴木 なんでって? 中村 だって、噂あったでしょ? 鈴木 あぁ、これ(おかま)じゃないかって? 中村 まぁ、単に目が悪いから、顔の近くで話さすのが癖だったみたいだけどね。 別のソファーに座っている中年女性、片岡順子。 渋そうな顔で煙草を吸っている。 そこに弁護士の澤村が来る。カバンを持っている。
/44ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加