『遺作』

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鈴木と中村。 鈴木 それにしてもおっさん死んでよかったね。 中村 なに言うのよ、人聞き悪いじゃない。 鈴木 顔がにやけてるよ 中村 え? 鈴木 嘘だよ。 中村 冗談やめてくれよ。 鈴木 で、今年もするんでしょ?あれ? 中村 いやー今年はねー 鈴木 なんでやんないの?“年に一度の杉森信盛、遺作公演!” 中村 実はさぁ、まだあがってないんだよ、ホンが。 鈴木 今年こそ、本当に遺作公演になったのにね。 中村 こういうときはさ、チケット売れてても中止してくれ!って、先生の希望だからさぁ。 鈴木 それにしてももったいないねぇ。 中村 このぐらいが丁度いいのよ。だって、遺作公演って、もう十二回もしてるんだよ。これ以上やると世間様に申し訳ないよ。 鈴木 もったいないなぁ。俺がプロデューサーならホンでっちあげてでもするけどなぁ。 中村 無茶言わんでよ。 鈴木 この企画ってさぁ、どっから沸いてきたの? 中村 先生の方からだよ。 鈴木 だと思ったよ。遺作を前提に芝居を書くなんてあの人の考えることだよな。 中村 13年目でやっと遺作になるっていうのに。・・・・いつもはとっくに出来てるんだよ。この前もさぁ、亡くなる少し前だっけ?電話で話したんだけどその時は、もう出来てるって・・・・酔ってたからどんな話だったかは覚えてないんだけどね。
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