プロローグ

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「ユーリ・シトラス博士。これは命令です。今すぐ、監獄島に帰り、イリスのメンテに戻りなさい」  スクエア邸にある謁見の間で総督、アイリは、言った。  周りに人は居ない。ユーリだけがアイリと向き合う。  この時、監獄島にイリス管理人を新たに派遣したことが伝えられていた。 「島の事情より、囚人として捕まった人々のことが知りたいんだ。それが終わらないことに、僕は帰らない」  渡された資料を叩き返し、ユーリは、立ち上がる。こうやって話始めて、もう数時間になるが、話は平行線を辿っていた。 「だから、貴方の婚約者、並びに知人のことは私に任せなさい。島に神官が上がったら前の比では済みません」 「もう、神官だらけだろ。ハリスが怪しいという話も隊長君から聞いた。なぜ、ハリスを失脚させないんだ」  ユーリは、相手が誰だろうと構わなかった。珍しく怒りを持って、アイリに訊ねる。神官にルティアナを含む知人数名が、囚人として連れていかれた。それが、ユーリを急がせている。 「落ち着きなさい。ハリスは、あの位置で良いのです。彼が罪人であることは私も承知していました」  アイリが、静かに言う。 「承知していたなら何故、今まで飼い馴らしてきたんだ。つまりは、マナ君が島に来る以前から島の情報が筒抜けだったということだろ?」
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