プロローグ

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「その通りです。然し、それは、私がシュイリを好きだったから。半年前の戦争でばれてしまいましたけれどね」  アイリが、瞼を伏せた。机には、散らばった資料と紅茶カップがある。紅茶は既に冷めていた。 「然しもう未練は無いと。それで蹴りは着いた筈だ。あの島に神官と通じる奴らを置く必要は無いだろ」  ユーリは、アイリを見つめる。アイリは、溜息を吐く。 「ところが、カルーアはそうではなかった。まさか、島を欲しがるなんてね」 「本当に島が欲しいのかい。僕は、あの闇医者が欲しいと聞いたよ」  ユーリは、島に匿われたブギルを思い出す。そして、他の戦線に駆り出されたスピカの仮説を答えた。 「――そうね。言われたわ。闇医者さんを渡せとね。でも、それならこちらとしても切り札だわ。簡単に、彼は渡さない。寧ろ、神官が如何に道を外れた生き方をしているか、一般市民に見せ付けてやる。と、そう考えたのよ。声明でもそう告げたでしょう?」  対して、アイリは頷き、淡々と語る。 「それは聞いたさ。だけど、ハリスが手を打っている以上、島は神官だらけだと僕は思う。イリス管理に帰っても、何時殺されるか分からない」 「怖いのですか?」  アイリが、ふいに顔を上げた。
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