プロローグ

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「いや。折角掴みかけた幸福らしいことをそんなことで失うのが嫌なんだ」 「掴みかけた幸福らしいこと?」  アイリが、ユーリのユニァンスが分からずに首を傾げる。 「婚約者が連れていかれた。僕だけ仕事には戻れない。悪いけど。ハリス長官が代理を用意したならその代理にイリスは任せるよ」 「ユーリ博士!」 「悪い。今は、ルティのことしか考えられない。折角、助けて貰ったけど、話してる時間も惜しいんだ」  アイリも立ち上がり声を荒げる。だが、ユーリは首を振った。鉱山に運ばれたのだ、過労で倒れているかも知れないし、他の男に手を付けられたかも知れない。無駄な憶測はユーリから離れなかった。  深々と礼をして、謁見の間を飛び出す。外に居た馬車に乗り込んで、ユーリはスピカとソラが居るだろう戦地へ向かう。  昼間の太陽が、一番高い場所にある時刻だった。
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