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夕日の差し込む図書室の窓際の席。
窓からは、春のうらやかな風が図書室を巡回していた。
一人の少女が、ノートに鉛筆を走らせていた。
色素の薄い髪に、くるくるのパーマをかけた肩まで伸びた髪を、ラフに後ろでひとつ結びにしている。
真っ直ぐな眼差しは光を浴びてキラキラと輝いている。
図書室では、本を借りたり返しに来る人の、必要最低限の声しか響かない。
時折、図書委員の少年は少女に目を向けては密かに微笑んでいた。
少女は周りなど全く気になる様子もなく、集中している。
時折ペンを置くと、物思いにふけるように顎の下に手を入れて大きなため息をつき、しばらくすると少女は眼鏡を直し、気を取り直したように書き始めるのだった。
一人の男子生徒が、図書室の扉を開けた。
図書室に居た女子達は、少年の姿に一瞬我を忘れたように見惚れ、それから静かに図書室を出て行った。
真っ直ぐに目を向けるのは、ノートに鉛筆を走らす少女の姿。
彼は一瞬眩しそうに目を細めたあと、少女の姿を視界の隅に入れながら、何気なしに本を物色した。
そして、本を一冊手に取ると、本に視線を落とすようにして少女を目に入れる。
春の風が少女の柔らかな髪を揺らし、日差しは少女の大きな瞳を輝かせていた。
少年はしばらく少女に見とれ、それからさりげなく少女の座る長机へ。
少女のななめ左に座り、本を開いた。
少女の鉛筆を走らせる静かな音だけが響いている。
少年はしばらく本を読んでいたが、気になるのか少女をちらちらと伺う。
少女は気づく様子など全くない。
やがて、大きく深呼吸をして自分を落ち着かせると、
少年は少女に声をかけた。
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