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次の日も、また次の日も優也は図書室に姿を現した。
ノートに鉛筆を走らせる翠の、斜め左に座って、静かに読書している。
二人は会話する事なく、同じ時間を過ごした。
「ねえ」
ある日翠は優也に話しかけた。
優也は本から目線を上げて翠を見る。
「前から思ってたんだけど」
「うん?」
「部活に行かなくていいの?」
翠の言葉に、優也は腕を組んで深く座り直した。
「言っただろ?部内がもめてるって。
とても練習所じゃない」
「副部長のあなたがそれでいいわけ?」
呆れた、と翠はため息をついた。
「華音が居るし、僕はお呼びでないよ」
「華音の言う事を聞く忠犬なのね」
優也は翠をじっと見た。
「君って、時々人を傷つけるような事言うよね」
「傷ついたなら、私に関わらなければ平和よ」
「僕を突き放すために言ってるの?」
翠は肩をすくめてみせた。
「かもね」
「じゃ、その手には乗らない」
優也が微笑んだ。翠は驚いた顔をする。
「君に凄く興味があるんだ」
「その興味がいつまで続くか見ものね」
翠はノートを閉じると、席を立った。
「もう帰るの?」
「今日は本屋に寄るから」
優也が席を立った。
「僕も一緒に行っていい?」
翠と優也は二人で大型の本屋に来た。
10階建てのビル内全て書物に溢れている。
翠は店に入ると、優也へ振り返った。
「じゃ、私はここで」
「え?!」
翠は怪訝な顔で優也を見た。
「私は邪魔されずに本を選びたいの」
「OK。君の邪魔はしないよ。静かにしてる。
それなら一緒に回ってもいいだろ?」
「あなた、私の事変わってるって言ったけど、あなたも相当変わってる」
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