-犬-

5/5
4204人が本棚に入れています
本棚に追加
/1061ページ
「コウタ、君はどちらが敵だと思いますか?」 問う───彼が少年なのは知っているが、私はあえてそれを尋ねた。 「僕は【corporation】だと思っていたけど。だって、リョウヘイさんを無理やり利用しようとしていた奴らだよ?」 コウタがまっすぐな瞳をこちらへ向ける。リョウヘイさん───家族になり五年経っていたからこそ“お父さん”と呼んでいるのかと思っていた。 だがそうでもないらしい、私は「それは一方通行での見解だからですよ」とコウタへ言う。少年は「一方通行?」と目を丸くした、さすがに彼も今の言葉を理解するのを難しかったらしい。 「―――つまりコウタが被害にあってるからこそ、敵だと認識してしまうだけです。 結果的に、【company】は堂本ケンの彼女を殺害しているし、宇佐美イブの護衛も穴だらけでした。それに比べ【corporation】は確かにやり方は卑怯ですが、約束通り貴方たちは無傷であるでしょう?」 「……そ、そうだね。」 コウタは納得したように頭を縦に振る。今の状況、今の情報ではどちらが敵かは判別がしずらいのだ。 林アヤ───彼女の愛犬の首輪に隠された暗号文章、それによれば新しい情報が入手されている。 黒金リク、湯浅ノゾミ、宇佐美イブら数名が、虎田ショウタ救出に動き始めたこと。 そして────。追川リョウヘイがこちらの仲間になったこと。 私たちは、今から起きる悲劇を食い止める。 ────第三勢力として。
/1061ページ

最初のコメントを投稿しよう!