-ふたり-

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反能力薬で能力を消せたのは、【company】の作り出した能力薬AJTが作用した人間のみ。 【原核】である彼は、宇佐美イブと並ぶ。能力薬ではなく生(せい)した時から持っていた力。それは、完全に体と同化していたからこそ、進化した細胞体は反能力に逆らう。 医学的説明は考慮したとして、ハッキリしているのはQの能力を弱らせるまではしたが“消せなかった” 「―――俺もビックリしたんだぜ? 嬉しかったわけでも悲しかったわけでもない。ちなみに、今までに奪った能力は無くなっていたぜ、つまり、リセットだぜ。」 Qは笑っては───いなかった、彼は能力を欲していたわけではない。 過去───それは“8番”と呼ばれていた親友を壊した力だからこそ。あれから狂い出した、能力に支配された己を、“Q”と名乗り出した誕生のあの日。 今のQはあのときの“Q”とは違う、それは俺も見たではないか。 彼はきちんと裁きを受けて───だから今が在る。 「ま、安心してイイぜ?リセットになったからってまた能力を“奪う”ことはしないつもりだぜ。俺は強くなりたくはない。 ───弱いままでいい。」 きっと、彼は恐れている。昔の自分を。 “Q”として生まれたあの日を、親友を壊したあの日を、すべてを狂わしたあの日を、持つ能力に支配されたあの日を、世界がオカシクなったあの日を。 だから彼は逃げている。 俺と一緒に、奴らから。 彼はわかっているんだろう、奴らに捕まれば自分はあの“Q”の悪名を貼られて何かをさせられることを。
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