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「さっさと行く、ぜ?」
Qは倒れた彼女はベンチに優しく寝かせる。
気遣い───彼がこんな気遣いをするなんて。五年前は考えられなかった。
確かに、Qの奇妙でオカシイ性格は変わらないが、小さな隅から少しずつ変化があるのに気づく。
Qは変わってきている。それは良い方向へと。
「目的の場所まであと少しだぜ、バイクならば30分もかからないさ。」
Qがバイクへ股がる、俺を急かすような視線。
「わかった」と俺もバイクへと股がれば、彼はいたずらっ子のような笑みを向けてきた。
本当によく笑う奴だ、だが五年前と違い、奇妙で気持ち悪い笑顔ではない。優しさを含んだ、柔らかい笑顔だった。
彼は――本当に変わった。
ふたりきりになったのは、ほんの数十分。でも彼の小さな変化に俺は気付き始めていた。
「ねぇ、はち……えっとショウタ、表通りは目立つから裏から行こうぜ。」
Qが俺へ言う──彼が俺を一瞬、誰かと間違えた。
はち───8番と呼ぼうとしたのだと、すぐに俺は察した。“8番”と称されていた彼と被っている為だろうか、きっとQは親友の“8番”と一緒にいる気持ちであるんだろう。
ふと、振り返れば目が合う。
Qの視線は笑っていて泣いていて謝っていて。きっと俺の姿から、親友の彼を見ている。
それが、すぐにわかった。
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