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『本当にねぇ…最初はどうなる事かと思いましたさぁ。あ~んな小便くさい小むす…あら、失礼。でもねぇ…天下の坂本の旦那がって、そりゃあ思うってもんさ』
霧島の秘湯、塩浸温泉唯一の湯治宿の女将お涼は話す
『どちらのお姫様かと見紛うばかりの世間知らず…でもね、センセ。あたしゃあ、あん娘(こ)が気に入りましたよぅ』
こんな場所には似つかわしくない色香の漂う江戸者…さしずめ西郷の息の者か
武市は大久保はともかく、西郷を信用しきってはいなかった
『女将。面倒な事を頼んですまないね。詰まらない物だがこれを…』
懐から小さな包みを出す
『まぁ、そんな気遣いしなくても…鍋島の煙草じゃないですか。嬉しいわぁ』
『本当に下らない頼み事をしてるのは、こちらだからね』
『フフッそれに関しちゃセンセ、あたしの出る幕は余り無さそうなんですよぅ』
『ほぅ…龍馬が大人しくしてるとは思えんが』
女将はクスクス笑いを堪えなが、らくしゃくしゃの半紙を渡した
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京離れ
恋女房と二人宿
なのに契れぬ
我が身恨めし
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『…ぶっっぐっ…お・女将っこの汚い字はっぶふっ』
『もちろん、坂本の旦那のですよぅ』
『あーーっはははははははっ』
『ついこの間の事ですからね、センセが気にしてるこたぁ、なぁんもありゃしませんさ』
『女将の計らいですか?ふふふっ』
『あたしゃ、なぁんも♪』
『しかし龍馬は…ぶふっかなり…ふははははっ』
『フフフ…えぇ、そりゃあもう快方したら若妻可愛いや愛おしや、隙あらば…って感じでさぁ。センセに頼まれなくても、あんな娘っ子じゃあ事態もわからず通じちまうねぇって踏んでいましたよ。僭越ながらあたしの亡き養父は医者でしてね、多少は知がある』
『ほぅ…それは頼もしい』
武市は意外な事実に驚いたが、間者の可能性は高くなる…が喋り過ぎだ
腹が知れない
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